風邪〜アスカ〜
「へくしゅん!」
アスカはベットの中で豪快なクシャミをした。
「へくしゅん!」
ニ発目
「へくしゅん!」
三発目
「あ゛〜〜づいてないわ。どうして今日風邪ひくのよ」
自分自身に腹が立つ。普通の日ならこんなに怒ることはないだろうが今日は違う。
「せっかくヒカリ達が誕生会を開いてくれるのにオジャンになちゃった」
そう今日は12月4日、アスカの誕生日である。
「へくしゅん!」
だが見てのとおりアスカは風邪、誕生会どころではない。
コンコン
「何よ!」
「アスカ、おかゆだよ」
シンジがおかゆを作ってきてくれた。いつもなら普通に対応するのだが、今は最強に機嫌が悪い。
「はい熱いからゆっくり食べるんだよ」
「いらないわよ!」
「ダメだよ。栄養を取らないと治らないよ」
「いいのよ、治らなくて!」
「アスカ・・・・・」
「でてってよ」
ボプ!
シンジにマクラを投げつけ命中。そのままリビングに吹っ飛んだ。
「お、置いておくから食べるんだよ・・・・・」
そのまま沈黙。
「わかっているわよ・・・・・・」
ピシャリと襖を閉めると聞こえない小声で呟いた。
「・・・・・・」
お盆に乗せられたおかゆ、湯気を立てて美味しそうである。
ギュルギュルギュル〜〜
香りにお腹が反応した。誰も見ていないのだがそこは14歳の乙女、頬が赤くなった。そしてお盆の前に胡座をかくと、レンゲですくい冷まして口に入れた。
「・・・・・美味しい」
そのおかゆはいつもよりも美味しかった。
「ごちそうさま・・・」
きっちりと手を合わせ、そして片付ける為に台所に持っていく為に襖を開けた。
「シンジ!」
「・・・・・・」
そこにはまだシンジが沈黙していた。
「こらバカシンジ!いつまで寝ているのよ」
ドンッと横っ腹に蹴りを入れ強引に起こした。
「イタタタ、あれアスカ?」
キョロキョロ周りをみまわし、状況が掴めない。
「バカ!」
お盆をシンジに押しつけると、襖を豪快に閉めてまた部屋に閉じこもってしまった。
「な、何だったんだよ」
バカ呼ばわりされ、怒るがまだ状況が掴めていなかった。
「あ〜あ、つまんないな」
ベットに潜りこむと、布団を頭から被り不て寝した。
「へくしゅん!もうっ!」
それから何時間寝ただろうか、起きた時にはすでに外は薄暗くなっていた。アスカは少し小腹が空いたのでベットから出ると、台所に向かった。
「シンジ〜、お腹空いた〜・・・・・・シンジ?」
この時間であればシンジは夕食の準備に取りかかっているのだが、台所は暗くヒンヤリ冷たかった。
「シンジ〜?」
家中を捜すがいない。どこに行ったのであろうか?
「あ〜もうバカシンジ!私に断りも無く出かけるなんて死刑ね」
それだけで死刑とはシンジは可哀想である。
「クエ〜〜」
いらだち地団駄を踏むアスカの振動に気づいたペンペンがやって来て、何事かと首を傾げた。
「ペンペン、バカシンジがどこに行ったか知らない?」
「クエ〜クエ」
プルプルと横に五回振るペンペン、その姿にアスカは影を落とした。
「そう・・・・・」
とぼとぼと肩を落とし部屋に戻り、ベットに潜りこんだ。
「・・・・・最低の誕生日だわ」
瞳に涙をためるとクシュクシュ鳴らして眠った。
「へくしゅん!」
「アスカ、誕生日おめでとう」
「ありがとうシンジ」
「これプレゼント、受け取って」
「何かな?・・・・・・・・これって・・・・・・」
「うん、指輪だよ・・・・・・アスカ僕と結・・・・・・・・・・」
「・・・・・カ・・・アス・・・・・、アスカ」
「う、う〜〜〜ん」
体を揺らされる感覚、そして・・・・・・
「アスカ、起きた?」
「う、う〜〜んって、良いところで邪魔するんじゃないわよ」
バチ〜〜〜ン!!
良いシーンで起こされ不機嫌、一発シンジにお見舞いした。
「い、いたい」
「それに何よ!レディ〜の部屋に断りも無く入ってくるなんて!」
「ちゃんと断ったよ」
「何ですって!」
ジロリと睨みつけ震えあがらせる。
「それで何よ。今までどこに行っていたのよ!」
「ご、ごめん。実は・・・・」
シンジは床に置いていた。箱を取りだし開けた・・・・・・
「これを取りにいっていたんだ」
中身は綺麗にデコレーションされたケーキ、中央のチョコレート文字盤には『HAPPY BIRTHDAY ASUKA』とホワイトチョコレートで描かれていた。
「本当は作りたかったんだけど時間が無くて、注文していたんだ」
「そうなんだ・・・・」
ケーキにローソクをたてると火をつけ電灯を消した。
「さあ消して」
「うん」
ふ〜〜・・・・ふ〜〜
2、3度息を吹きかけ消した。そしてシンジは明かりをつけ、拍手をした。
「アスカ、誕生日おめでとう」
「ありがとう、シンジ」
満面の笑みを浮かべるアスカ、今までの苛立ちは消えうせてしまった。
「さあ食べよう」
ケーキにナイフを入れ皿にわける。
「シンジ、プレゼントは?」
「うん、取ってくるよ」
そして自分の部屋にプレゼントを取りに戻った。
(何をくれるのかな?)
ワクワクしながら待つアスカ、想像は夢のプレゼントである。
(でも小遣いじゃ買えないか。私が欲しかったアレかな?)
想像がどんどん膨らんでいく。
「モグモグ、美味しいわね〜」
「!ミサトなに食べてんのよ」
目をつぶり想像を働かせていたら、聞いたことがある声。目を開けるとそこにはミサトがケーキを頬張っていた。
「何ってケ〜キよ。モグモグ」
「ミサトさん、帰ってきていたんですか」
「たった今ね。お腹空いちゃって」
戻ってきたシンジ、ミサトは口中クリームだらけである。
「あっちに行っていてよ!今は私とシンジで誕生会を開いていたのよ」
「二人で〜?あらあらお熱い事」
カア〜〜
ミサトのからかいに二人は耳まで真赤になった。
「う、五月蝿いわね。熱くなんか無いわよ。寒いくらいよ」
「そうかしら?ちょっち熱くなってきたわ」
パタパタと手で扇ぎ、汗を拭く仕草でケラケラと笑った。
「あっちいけ〜〜!!」
「はいはい、お姉さんは退散するわよ。じゃあ頑張ってね〜〜」
投げつけられるクッションをよけると、笑いながら襖を閉めた。
「ぜえぜえ、まったくミサトの奴」
(・・・・・・何が頑張ってなんだろう?)
「ふう〜とんだ邪魔が入ったわね。じゃあちょうだい」
「うん、はいこれ」
シンジは綺麗にラッピングされた細長いケースを渡した。
「何かしら?・・・・・・・・・・・わあ時計〜〜」
中身は赤いスウォッチ、取り出すとさっそく腕につけた。
「似合うと思ったんだ」
アスカはスウォッチをつけた手首を何度も見つめる、気に入ったようだ。
「ありがとね。シ〜ンジ、チュ!」
頬に軽くキス、だがシンジは真赤になってしまった。
「ア、ア、アスカ・・・・・・」
「なに動揺してるのよ。こんなの外国じゃ常識よ」
「う、う、う、うん!」
「落ちつきなさいよ。バカシ〜ンジ」
冷静さを保っているが少し頬が桜色に染まっている。鼓動は早く高鳴っていた。
部屋の襖の向こう、その様子をジッと見つめている目があった。
(ふ〜ん、アスカもなかなかやるわね。記録記録っと)
家主はしっかりとその様子を記録していた、そのデータはどこに行くのであろうか?・・・・・・・
風邪、アスカ編は誕生日に引きました。まあ誕生日のSSは普通にみんなで祝うのが定番なので、こういった場面もいいかなと描きました(でも同じようなSSがあるかもしれませんね)
最後にミサトが記録したデータの行き先は・・・・ゲンドウでしょうね(^^)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 風邪〜アスカ〜